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サカナクションが約10年ぶりに1曲のライブ映像を公開した戦略的意義

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サカナクションが「多分、風。」のライブ映像を公開。

natalie.mu

これ、単に「ライブ映像が1本新たに公開された」以上の意味があると自分は見ています。

これまではライブ映像そのものを「商品」として重く捉えていた

サカナクションはここしばらく、「ライブ映像を1曲フルで、無期限で公開する」というやり方を取っていませんでした。直近はYouTubeをあさる限り、10年近く前のこちらのライブ映像です。

GyaOなどで「ライブ映像を1公演まるごと、期間限定で公開する」というのは何度かありましたが、「無期限で」は本当に久しぶりなのです。

一方、MV(ミュージックビデオ)はこれまで積極的に公開を続けてきました。それも生半可なレベルではなく、YouTubeにアーティストが公式にMVをアップすることがまだ普通じゃなかった頃から、先駆けて公開を始めていたほどです。

gerbera-music.agency

また、自主レーベル「NF Records」を立ち上げると、過去の作品から最新のものまで、すべてHD画質でアップし直すなどの積極っぷりも見せてきました。

www.youtube.com

つまり、ここしばらくのサカナクションは、「"音源"としての映像作品は積極的に無償公開するが、ライブ映像は公開を控える」という姿勢を取ってきたのでした。

サカナクションのライブといえば、尋常じゃないコスト、そして高い完成度——。それは、映像として無償公開せずとも、口コミで話題が広がっていくレベルなので、「無償公開なんてせずに、ライブ映像もあくまでライブチケットと同じ『商品』として扱うべきだ」と彼らは考えていたのではないでしょうか。

「ライブ映像」ではなく、「ライブ映像のパッケージ」を最大の「商品」に変更した

では、なぜここに来て、ライブ映像を1曲、無償で公開したのか。それは、ライブ映像の一部分を認知・集客のツールに変えて、それによって減少する利益はライブ映像の「パッケージ」で補填するほうが、トータルで見たときに得策だと考えたからでしょう。

人気が上昇するにつれ、ライブチケットの倍率は高まります。いくら大きなライブ会場でも、定員という概念は存在します。「本来このライブを体験してもらえれば、きっとファンになってくれたはず。だけどチケットを用意できず、機会損失となってしまった」というケースも増えていきます。

そんなケースでの損失を少しでも防ぐには、映像であっても、そのライブを体験してもらうのが得策です。ライブ映像を商品として重んじるのではなく、ライブに来れない人にライブの興奮を疑似的に体験してもらうツールとして捉え直したのでしょう。

しかし、一部が無償公開されることで、ライブ映像は相対的に価値が下がるリスクを抱えます。それについては、「パッケージ」としての価値を高めることでカバーする方針にたどり着いたと考えられます。

今回の「多分、風。」のライブ映像が収録されているDVD、Blu-rayは、ディスクのほかに400ページに及ぶフォトブックなどが同梱され、最高値のエディションは10,800円(税込)という、相場よりかなり高めの価格設定がなされています。

SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around (完全生産限定プレミアムBLOCK) [Blu-ray]

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公式にも「音楽ソフトのプロダクトとしての価値の拡張」をテーマにしたと語られており映像そのものに縛られず、パッケージ全体としての価値を高める方向を今は追求していることは明らかです。


つまり

Before / Afterを簡単にまとめると、こんな形になるのだと思います。

Before

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After

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安易にライブ映像を公開したのではなく、状況や段階に応じて戦略を変えており、その結果がたまたまライブ映像を公開するという手段に着地したということなのだろうなと思った次第です。

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